自分に合った枕の選び方!知らないと失敗する大前提【心理士が解説】
こんにちは。当サイトのコンテンツ執筆者、日本心理学会認定心理士の「まこ」です。
運がいい人は、総じて睡眠の質が高い!私が研究から導いた持論です。枕は睡眠の質を左右する重要な要件となっていて、心理学的に枕は「無意識」の状態で使う「道具」です。ここが枕選びの重要なポイントです。
※(プロフィール)
「睡眠と精神」の関係、「睡眠の質と心の安定」について研究しています。研究の過程で、睡眠の質について知れば知るほど枕が深く関係していることが分かりました。研究を通じ「枕は睡眠そのもの」と考えるに至りました。
目次
自分に合った枕選び!知らないと失敗する大前提とは
これを知らないまま、理解しないまま、自分に合った安眠、快眠枕を選ぼうとしても、納得できる枕を選び抜くのは難しいと思います。
心理学的に人の心理には、「意識」「前意識」「無意識」があることをフロイトが発見しています。前意識とは、単に忘れているだけで思い出すことができる状態、無意識とは自我の意識が弱まっている状態を指します。睡眠中は、自我の意識が殆どないので「無意識」の状態と言えます。
つまり自分に合った枕選びとは、「無意識の状態」=「自我の意識がない状態」での使い心地が最大のテーマとなっているため、ややこしい話になってしまいます。
人は道具を使う動物です。そして枕は、寝るときに使う道具です。一般的には寝具に分類されます。道具は、何らかの目的を達成するために作られたものです。これについては、枕も他の道具も同様です。しかし、他の道具の殆どは人が起きている状態(自我の意識のある状態)で使用することが大前提となっていますが、枕は寝ている状態(自我の弱い無意識の状態)で使うことを前提としています。
要するに、枕は起きている状態でどれだけ使用感を確認しても、使用される本来の前提とは異なるため、あまり意味がないのです。では、どのように確認すれば良いのでしょうか。それは簡単です。他の道具の使用感を確認するときと同様に、本来の使用環境において実際に使ってみれば良いのです。やはり、無意識の状態(寝ている状態)で使ってみる以外に方法はありません。
自分に合った枕選び(低反発・高反発)の基本は正しい高さを知ること
そして、先ず大切なのは自分に合った高さを知ることです。枕の高さを決めているのは、主としてその枕の構造です。従って、枕の構造に着意し、自分にとって最適の高さかどうかを確認することが大切です。
枕は選び方を間違えると、身体への負担が大きく、生活全般にも影響が及びます。こうした点も、他の多くの道具と異なります。一律に、低反発枕が良い!高反発素材が良い!ではありません。また、基本的には無意識の状態で使っているため、その使用時間について深く考えたことがない人が多いと思いますが、普通の人は1日6~7時間連続使用しています。しかも毎日です。
これ程の長時間、かつ長期に渡り使い続ける道具なんて枕以外に何があるのか想像できません。少々大げさな言い方かもしれませんが、「一生の約3分の1」を枕と過ごすことになります。思わず「枕さん」と呼びたくもなりますね。
枕選びは高さ選び(構造編)
この理想のS字カーブを寝た状態でも保つために必要なのが枕です。
なぜ寝ている時にも背骨のS字カーブ保たなければならないのかについては「枕は、なぜ必要なのか」で詳しく紹介しているので、是非そちらをご参照ください。
上図をご覧ください。寝ている状態で背骨のS字カーブ等を理想形で保とうとすると、頭部や首の後ろ側に空間が発生します。この空間を何かを使ってサポートしないと重力があるので、後頭部は床(敷布団)に接地してしまいます。
当然、接地してしまうと理想のS字カーブが保てない状態になるので、首や肩周辺の筋肉や関節に何らかの負担が生じます。こうした状態に陥らないように枕の構造(形)を用いてサポートします。こうした枕の構造が自分に合っているかどうかを確かめるのが枕選びです。
一方、これとは逆に枕が高過ぎる状態でも首や肩に負担がかかってしまう状況が発生してしまうことも図にてご確認いただけると思います。しかし、寝ている間は、無意識なのでこうした負担を体感することなく翌朝の目覚めとなります。
目覚めた瞬間に、
「なんだか、すっきりしないなあ」
「少し肩が痛いなあ」
「首がこってるなあ」
と感じることになります。
こうした状況が続くと、肩こりや首のこりだけでなく様々な健康障害に発展する場合があります。仮にマッサージを1時間してもらって、直後は楽になるかもしれませんが、こりの原因は睡眠姿勢にあって毎晩その姿勢を繰り返しているのですから焼け石に水と言わざるを得ません。
こる度にマッサージに通うのと、枕を自分の合ったものに変えるのとでは、どちらが健康的かつ経済的かは明らかですね。
高すぎる枕の一般的な症状
様々な調査結果を基にすると、現在の人は枕が高すぎる傾向にあるようです。
枕が高すぎると、後頭部が必要以上に持ち上げられた状態になります。必然的にあごを引いたような状態にもなっています。こうした状態では、気道が圧迫され息苦しくなります。起きた状態で、この状況を再現知ればすぐにお分かりいただけると思います。
通常の呼吸が確保できないため、酸素不足になりがちで眠りも浅くなります。「自分のいびきで起きた!」って経験がある人もいると思いますが、多くの場合はこの状況が当てはまります。
また、特に女性には枕の高すぎには用心です。これも、この状態を再現して鏡を見ていただければ一目瞭然です。首やあごの周辺にしわができてしまします。気になる、ほうれい線などの形成の一因になるとの説もありますのでご注意ください。
低すぎる枕の一般的な症状
枕が低すぎると、後頭部が理想状態よりも下がってしまい、あごが上がります。心臓との位置関係で通常よりも頭に血が上りやすくなり、ある種ぼせた状態になります。頭部全般の血液循環が悪くなるので、顔などが張りぼったくなったり、むくんだりすることが多くなります。
高すぎ低すぎ枕の共通症状
どちらの枕も、肩や首周辺の筋肉に負担があり、睡眠中はこれら筋肉が常に緊張した状態にあるため、慢性的な肩こり首こりの原因になります。また、呼吸の妨げにもなるので、いびきなども多くなります。全般的に眠りも浅くなり、寝返りなども多くなるため、結果として睡眠中に十分な休息がとれずに疲れが残りやすくなります。
おすすめはユニット構造の枕
以上、枕の構造について紹介しました。既にお気づきの方もいらっしゃると思いますが、寝た状態でS字を保つためには、平らな構造の枕では難しいです。
そこで最近になって急速に進歩しているのが、多くの方が使っているのユニット構造の枕です。ユニット構造とは、いくつかのパーツで構成されていてその形状にも凹凸があります。肩の部分、首の部分、頭の部分それぞれを理想の状態で支えるためには、必要となる高さもそれぞれの部分で異なるので、理想を追求すれば自ずとユニット構造が最適になります。
私も、色々な枕を試しましたが、心地よく納得できた枕は、全てユニット構造でした。当サイトでも、ユニット構造の枕をおすすめしています。
こうしたユニット構造ですが、色々と調査するとユニットの構造や構成、組み合わせについて特許が取得されているようです。それぞれの研究所や企業ごとに開発され、特許が申請、登録されているようです。一見すると、同じように見える枕であっても、微妙にユニット構成が異なっていたり、細部にこだわりの設計がされている場合が多いです。見比べるときの参考にしてください。
快適に使い続けるための枕選びのコツ(素材編)
特に、機能性枕の場合は、その構造に目を奪われがちですが、その構造だけでなく、材質や枕の外側を覆う素材についても確認するのが快適に使い続けるための枕選びのコツです。
枕の通気性
人の皮膚からは汗以外にも、不感蒸泄(ふかんじょうせつ)と呼ばれている水分が放出されています。寝ている間にもかなり放出されていることが分かっています。
水蒸気として放出されているので目で確認することはできません。しかし、何となく蒸れている感じがするような状態の場合はこの不感蒸泄を枕が吸収しているか、あるいは外に逃がしているかが上手く機能していないことになります。
発汗については、眼に見えてわかるので枕がどのように対応してくれているかはある程度分かります。ところが、不感蒸泄については分かりません。しっかりと研究されている枕であるなら不感蒸泄への対応、つまり枕の通気性に関してきちんとした対策を講じているので、是非確認してみてください。
最近では見掛けなくなりましたが、構造的には優れているものの、外側素材が粗悪なナイロン製となっている枕があったりもしました。首の後ろなどは、ただでさえ汗をかきやすい部分です。ナイロン製では、不感蒸泄の対策もほぼ考えられてないです。汚れには強いのかも知れませんが、夏場などは、かなり不快になると思われます。
通気性がなく蒸れやすい素材では、構造的に優秀であっても不快なため寝返りが頻繁になります。結果として、枕が持っている機能を十分に発揮できなくなり、何のための枕であるのか分からなくなってしまいます。
枕の保湿力
枕には、肌や髪の毛が直接に接します。基本的に睡眠中は乾燥しやすくなります。こうした状況なので、保湿性に優れた素材を使っている枕をなるべく選ぶようにしたいものです。
就寝中に枕と接している部分の乾燥が進むと、枝毛、切れ毛などの原因にもなります。特に髪の毛が長い女性などは注意が必要です。
制菌抗菌性
どんな素材であっても人は汗をかきます。なるべく汗が多くならないような工夫は大切ですが、ゼロにすることはできません。また、枕は毎日使いますが、肌着のように毎日洗うことを想定していません。従って、制菌性、抗菌性のある素材であれば安心です。制菌・抗菌により、臭いの成分も抑えることも可能です。必須ではないですが、安眠快眠の追及には外せない要素です。
枕カバーの選び方(カバーをあなどるなかれ)
実際に幾つかの企業の機能性枕の開発を担当している人と話す機会が何回かありました。全ての企業が純正の枕カバーを付けています。その理由は、枕カバーも枕の機能の一部だからだそうです。よって、枕カバーも研究の対象にして、日々開発を進めているとのことでした。この話には、深く納得した次第です。もちろん、枕カバーは洗濯が可能なものでなくてはなりません。
何年か前に、私が研究する過程で出会った人ですが、せっかく評価の高い機能性枕を使用しているにも関わらず、厚手のバスタオルを2重にして枕カバー代わりに使っていた人がいました。どのような流れで、そのような使い方をしていたのかは不明ですが、とにかくそうした使い方は間違っている旨を説明し、適切なカバーにしてもらったところ、フィット感、ホールド感が格段に向上したと喜んでもらえました。
何となく軽視されがちな枕カバーですが、ユーザーが考えている以上に重要な役割を果たしていますので、ご注意ください。
枕選びは最初から100%を求めると失敗する
そして次に多いのは、最初から100%の完璧な枕を探している人です。最初から100%は、先ず無理です。オーダー枕でさえ、100%を求めるのは難しいです。上述の内容をご理解いただければ、概ね自分に合った枕が手に入れられます。最初は70%を目指しましょう。最初は70%の枕で枕に対する自分なりの知見を磨いて、次の枕で80%、その次で90%以上を目指すのが自分に合った枕を探すコツです。遠回りしているようですが、実はこれが一番早く自分に合った最高の枕を手に入れることができます。
こうした状況を失敗と呼ぶべきかどうかは微妙ですが、ごく稀に間違った枕の使い方をしている人がいるのも事実です。上項の枕カバーの選び方(カバーをあなどるなかれ)でご紹介したように、機能性枕の上に厚手のタオルなど置いて枕カバー代わりに使っている人です。仮に微妙な高さ調整をしたいのであれば、必ず枕の下に敷いて調整するようにしてください。
当サイトでも、「おすすめの機能性枕」を紹介していますが、機能性枕はそのユニット構造が命です。こうした構造をユーザー側で否定するような使い方はしないように心がけてください。開発者の信念が伝わらないだけでなく、枕としての本来の機能が発揮されないため、皆が不幸になってしまう使い方です。
ためしてガッテン流!自分に合った枕の選び方の盲点
放送内容の大筋は、片頭痛で悩んでいるある患者さんが、著名な整形外科医の診察を受けたところ、その原因は枕の高さであることが判明しました。そして、自分に合った枕選びを科学的にサポートしつつ、手作り枕を製作したところ3週間後には、片頭痛が解消し朝までぐっすり眠れるようになった。とした展開です。かための座布団と大型のバスタオルなどを活用する自作枕(マイ枕)によって、自分に合った枕を手に入れる方法が紹介されていました。
もちろん、こうした方法で片頭痛や肩こりが解消することが十分に期待でき、かつどの家庭にもある素材で簡単に作れるのですから、コスト等を考慮しても一石二鳥です。また、高さの微妙な調整も気が済むまでできるので、自分に合った最適な枕の高さを確認しやすいメリットもあります。
ただし、これには盲点があります。タオルなどは、昨今の機能性枕など向けに開発されている専用の素材とは異なり、素材としての弾力性を継続的に維持できないことです。
基本的に、機能性枕はその素材の持つ弾性により、一定時間使用しなければ、ほぼ元の形に戻るように設計されています。しかし、タオルなどは、そもそもの目的が異なるため弾性の劣化が著しいです。つまり、枕の高さが低くなるのが早くなり、その管理などが煩雑になります。また、各パーツも分かれているためズレやすいです。
あと私が試してみた感じの個人的な所見ですが、横向きに寝た時間が長かった場合などは、翌朝の顔にタオル地の跡が結構鮮明に残っていました。起きて数十分もすれば、そうした跡もなくなりましたが、毎朝となるとちょっと避けたくなったのが本音です。片頭痛の解消とタオル跡とを天秤にかけたときにどちらをとるのかは人それぞれだと思いますので、あくまでも私的な感想です。
とは言うものの、機能性枕であっても全てが完璧ではないので、どちらを好むかは本人次第ですね。
自分に合った最適な枕選び
自分に合った最高の枕は、自分の背骨のS字カーブを寝た状態でも自然に再現し、かつ無理なく保つことができる枕と言うことになります。
この目的を達成するために様々な枕が研究開発されています。こうした枕を実際に使用して自分にとっての良し悪しを判断することになります。
まず、枕選びで着意することは、構造と素材です。構造については複雑な形状(凹凸のある)の肩から頭部を支えるため、ユニット構造の枕をおすすめします。素材については、汗をかいたときにどうなるのかを念頭に置き、通気性、保湿性、制菌・抗菌性を確認してみてください。
そして、実際に使用感を確認するときは、普段使っている敷布団で実施することが大切です。
全般的な心構えとしては、段階的に自分に合った枕を手に入れるのが得策です。矛盾するようですが、100%の枕を求めるのは無理です。特に最初からそれをやっては、恐らく一生枕に対する不満を解消できず、自分に合った枕を探し続けることになると思います。
先ず自分にとって70%以上の枕選びを目指すのが大切だと思います。
「枕は、なぜ必要なのか」も是非読んでみてください。睡眠の質を追求できることがどれだけ大切で、かつ恵まれていることなのかがご理解いただける内容になっています。
これを機に、あなたの睡眠がより良い方向へ進むことを願っております。
日々の枕や寝具の情報に関することは、不定期ですが「寝具eye」にアップいたしますので、時々覗いていただけたら幸いです。