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枕は、なぜ必要なのか【心理士が解説】
こんにちは。当サイトコンテンツ執筆者の日本心理学会認定心理士「まこ」です。
持論ですが、「運がいい人は、総じて睡眠の質が高い!」と感じています。
※(プロフィール)
心理学的に、枕は「無意識の道具」です。ここが枕選びの重要なポイントです。「睡眠と精神の関係」、「睡眠の質と心の安定」について研究しています。研究の一環として、試しに幾つかの枕を購入したところ、「目覚すっきり」で、図らずも最高の枕を発見してしまいました。 以来、「枕」と「睡眠の質」についても自分なりの調査研究を続けています。
目次
睡眠不足は最悪の事態を招く可能性も
「自殺既遂者の心理社会的特徴に関する研究(睡眠障害と自殺の関係)」などを発表している (独)国立精神・神経医療研究センター松本氏等の調査によれば、睡眠障害と自殺には高い関連性があり、睡眠障害がある人は、ない人に比べ自殺のリスクが 21.6倍も高いことが判明しています。
また、同氏等による睡眠不足が精神にどのような影響を与えるのかの研究調査によれば、わずか5日程度の睡眠不足で、不安や恐怖による心理的な混乱が高まり、 抑うつ状態が現れると報告されています。この調査の被験者となったのは、一般的に健康と言われるごく普通の大人です。
これらにより、ごく普通の生活を送っている健康な大人であっても、睡眠不足が数日重なれば、精神的にも軽いうつ状態になってしまい通常の判断さえも難しくなってしまうことが分かりました。
睡眠不足には、時間的な要素と質的な要素がありますが、やはり重要なのは睡眠の質です。質さえ良ければ短くても最悪の事態は避けられそうですが、質が悪いと何時間寝ても睡眠不足になります。 睡眠の質を高めるための大事なツールとして、自分に合った枕選びがいかに大切かが分かる研究結果です。
睡眠不足、睡眠の質の低下は、もはや自分だけの問題ではありません。愛する人や守るべき人のためにも「睡眠の質と枕」について是非、考えてみてください。
目覚めすっきり。感動する枕との出会い
研究の一環として、使っていた枕に不満があったわけではないのですが、色々と調査しこれだと感じた枕があったので、思い切ってその枕に変えてみました。すると、「今までの枕は何だったのか?」と感じる程、睡眠の質の向上を体感することができました。目覚めのすっきり感が別物で、これには感動でした。
寝ている時に肩から上の安定感を強く感じ、この安定感が安心感につながります。枕の構造あっての性能だと思いますが、素材についても徹底的に追求しないと、ここまで高性能な枕はできないと感じました。最近の枕は、以前に比べて格段に性能がアップしているようです。
こうして、図らずも自分に最適の枕を発見することができました。そんなこんなで、自分なりに引き続き研究を続けています。今では「枕は睡眠そのもの」とした考えに至っております。
人はなぜ眠るのか
有史以来、人は誰でも眠りそして起きることで生活しています。寝て起きる、この単純な繰り返しを延々と続けてきているのですが、なぜ眠るのかのはっきりとした学説はありません。ただし、睡眠は脳が発達した多細胞生物だけに存在していて、その脳を休ませるために眠りが存在していることだけは分かってきているようです。そして、多くの研究者がそう考えているのも事実です。
恐らく、未だに人間の脳については解明されていいない部分が多いため、こうした解明されていない部分が睡眠と深く関わっているのではないかと私は推測しています。何れにせよ、なぜ眠るのかについては、もうしばらくはっきりとした答えは期待できそうにありません。
しかしこうしている間も、世界中の人が眠くなり、毎日睡眠を繰り返しています。先ずは、繰り返される睡眠の質についてしっかりと考えた方が、自分たちの生活の向上につながりそうです。
枕は安眠、快眠の道具
睡眠の質を高めることは、様々な好循環を生み出します。一般的に睡眠の目的は、体力を維持し明日への活力を得るためと思われがちですが、実はそれでけではありません。むしろ疲労回復は睡眠の目的のほんの一部分でしかありません。質の高い眠りは、免疫力が高まり病気などへの抵抗力も強化されます。
学んだり、修練したりして得た知識や技能も睡眠により定着することも知られています。また、ストレスを取り除き安定した精神を維持するためには、一定量の睡眠が不可欠です。もちろん、こうした効果は睡眠の質が良いほど高くなります。寝ることによって、疲労が回復し、抵抗力も強化され、記憶が定着し、精神的にも安定するのですから、睡眠の質を高めることは、生活の質そのものを向上させると言っても過言ではありません。
熟睡が許されるのは人間だけ
例えば、弱い立場の草食系の動物などは極端に睡眠時間が短いです。アフリカの大地を駆け巡っているようなシマウマなどは、3~4時間です。キリンなどは30分と言われています。睡眠時間が短いだけでなく、万が一の際は、直ぐに逃げなくてはならないので、浅い眠りです。野生動物の深い眠りは命の危険さえあるのです。人間で例えるなら、恐れ怯えながら眠っている状態です。
また、イルカや渡り鳥の中には周囲を警戒しつつ脳を半分ずつ眠らせて睡眠をとっているものもいます。片目だけ閉じて左右に分かれている脳の半分を休ませている状態で活動したりもしています。水族館などで注意深く観察していると、片目を閉じたイルカがゆっくり泳いでいるのを確認できる時があります。生きるため、体力を維持するために、動物たちは本当に命がけで寝ていることが分かります。
こんな状態なので人間以外の動物は、睡眠の深さを追求することなどできるはずもなく、熟睡は敵からの攻撃を受けやすくなり大変危険です。布団やベッドに入って、または無防備な状態で大の字になって、何の心配もなく寝ることができること、安眠や快眠を徹底的に追及することができるのは、我々人間だけなのです。
二足歩行が枕の必要性を生んだ
直立二足歩行により、道具を使えるようになり、大脳が発達し大きくかつ重くなりました。人の脳の重さは、人間に近いサルなどに比べても約3倍の重さがあります。重くなってしまった脳を支えつつ大事な頭部を衝撃などから守るため、そして内臓などを含め無理なく最も負担がない状態で支え、バランスを保ったま上手く歩けるように背骨(頸椎、胸椎、腰椎、仙骨、尾骨)が徐々に湾曲しS字と呼ばれるカーブを描くようになりました。
人間以外の動物、つまり一般的に四足歩行する動物の背骨は単なるカーブ(アーチ状)を描いています。二足歩行する必要がないので、アーチ形で内臓等がそれにぶら下がるような構造の方が何かと都合が良いのでしょう。熊やゴリラなど一部の動物については、二足で立ち上がることもありますが、人が行う直立二足歩行とは、目的も動作も全く別物なので、一緒に考える必要はありません。
背骨のS字カーブのメリット
仮に、背骨が真っすぐだった場合は、こうした衝撃の全てが減衰することなく、もろに頭部に伝わってしまいます。頭部が振動すると走るどころか歩くことさえできません。これは人だけでなく動物全般にも言えることです。例えば、チーターは時速100KM以上で獲物を追いかけるとこができるとされています。このチーターが獲物を追いかけているVTR等を機会があったら是非確認してみてください。チーターの頭部は全く動いていません。常に一定の高さを保持しています。
また、プロゴルファーのスイングを観察してみてください。技量が優れたプロゴルファーは、スイング開始からボールを打ち出すまで、肩から下はダイナミックに動いていますが、頭は一点でとまった状態を保持しています。ちょっと脱線してしまいましたが、頭が衝撃を受けずに安定していることは、人が生活するうえでとても大事なことなのです。
話を元に戻します。走ったり、ジャンプしたりして受けた衝撃は、背骨がS字であればそれぞれの湾曲部分で、衝撃の方向が分散され頭部に到達するまでにかなり減衰されます。一説によると、背骨のS字によって頭部に伝わる衝撃を「5分の1」以下にまで弱めることができるとされています。
普通に生活していているとき、あるいは歩いたり、走ったりしているときに、頭部に強い振動を感じている人は恐らくいないはずです。しかし、実際には体全体で見ると、それなりの衝撃を受けています。そう感じないのは、S字のお蔭で頭部への衝撃の伝わりが緩和されているからなのです。
枕は、睡眠中の背骨S字のデメリットを補完する
加えて、人間の頭は歩行時の前方の安全を確保するため、進む方向の地面付近を見やすいように頭部が若干前方に傾斜しています。こうした、頭の前方傾斜と背骨のS字が、枕を使うこと枕を使った方が心地良いことの大きな要因になっています。
図で見ていただければ一目瞭然ですね。直立の身体状態で、そのまま仰向けになったとすると、頸椎部分のカーブ(首の後ろ部分)と床に空間ができます。また、後頭部が床面に接地せず少しら浮いた状態になっていることが見て取れます。この空間と浮いている頭を無理なく支えるため、言い換えればそのカーブした状態と頭部の前傾を負担なく自然に保てるようにするために枕が必要になります。そしてこの時の床と頭部の角度は概ね5度とされています。
仮に、こうした隙間を埋めなくても、つまり枕を使わなくても当然寝ることは可能です。しかし、体が持っている本来の自然な姿ではないため、どこかに無理を強いている状態になります。何らかの筋肉や関節が緊張した状態になっています。数日なら身体への影響も微々たるもので無視できる程度かもしれませんが、これが1日6~7時間、365日、毎日続くとなると放置し続けるのはあまりにも危険です。
子供には枕が不要な理由
新生児や赤ちゃん用の枕なども市販されていますが、そうした枕は大人の枕の用途と全く異なります。赤ちゃん用の枕は、頭の形を整えることを目的としています。決してS字を保つためのものではありませんので、使う場合はその目的を充分に理解したうえでご活用ください。
お父さん、お母さんは、注意深く観察し子供さんが枕を使い始める時期を適正に見極めてあげなければなりません。10歳を過ぎたころからお子さんは第2次成長期を迎えます。健全な成長に不可欠な成長ホルモンは睡眠時に多く分泌されることが分かっています。当然、その分泌具合は睡眠の質にも左右されます。よって、お子さんに合った適切な枕を使用して、安心してぐっすり熟睡できる環境を整えてあげてください。
直ぐにイライラする子供、攻撃的な子供、喜怒哀楽が乏しい子供、などは睡眠の質が大きく関わっています。精神的な成熟についても睡眠は深く関わっていることをお忘れなく。
枕はなぜ必要なのか
しかし、この湾曲は直立時の理想形を追求したものであるため睡眠時には若干の不都合が生じます。背骨の湾曲や頭部の前傾により、床面と身体との間に空間が生まれます。無理なく負担なく睡眠するためには、こうした空間を違和感のないように何かで埋めて支える必要があります。つまり、直立時の理想形とされているS字カーブを、寝ている状態でも再現させることが体にとっては最も負担が少ない状態になると言うことです。
そのためのツールが「枕」です。そして、こうした空間には人それぞれに個人差があります。従って、人それぞれの枕が必要になります。同じ枕であっても、違和感や使用感は人それぞれです。評判の良い枕、人気がある枕などは選択する際の基準にはなりますが、実際に使ってみないと何とも言えないのが枕です。
以上、つたない説明で申し訳ございませんでしたが、枕が存在する理由となります。枕の大切さを少しでも感じていただけたら幸いです。
では、具体的に自分に合った最適な枕を見つけるにはどうしたら良いのでしょうか。これについては、トップページの「自分に合った最高の枕の選び方」にて紹介しています。是非、参考にしてみてください。